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「祭典便乗型改憲」——リセット症候群の危うさ

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大型連休に入った。人々の気持ちが「非日常」モードになっている時期に、これまた30年に一度の非日常的な出来事が続く。4月1日に「新元号」が公表され、その前後の「時間」はメディアを通じて、官邸の思うがままに管理・操作されていた。「元号」を政令で決められるようにしてしまった元号法(1979年)に、そもそもの問題があったことをここで指摘しておきたい。

「元号が変わる。紙幣も変わる。この機会に憲法も変えよう」と、何の脈絡もなく、とにかく「新しい時代」になるからということで、すべてをリセットしようとする動きが進んでいる。私はこれを「リセット症候群」と呼ぶ。「昭和憲法から令和憲法へ」。『読売新聞』5月3日付1面トップは、「新しい時代の新しい憲法」を前面に押し出してくるだろう。

ご記憶だろうか。2年前の今日(4月29日)午前6時頃、北朝鮮が「弾道ミサイル」を発射したというニュース速報が流れ、東京メトロが全線で一時運転を見合わせたことを。連休の初日だった。この頃、北朝鮮のミサイルが今にも日本に向かうかのような空気が演出されていた。
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昨年の今頃、安倍首相は、北朝鮮問題では「最大限の圧力」と「対話のための対話拒否」をひたすら繰り返していた。それがどうだろうか。トランプと金正恩の米朝首脳会談が行われるなか、先週公表された『外交青書2019』からは、昨年の『外交青書2018』にあった「北朝鮮に対する圧力を最大限まで高めていく」という文言が削除されたのである(『毎日新聞』4月23日)。トランプへの忖度だろう。
25回以上と、会談回数ばかりを誇る安倍首相のプーチンへの「一方的な片思い」も見事に裏切られ、北方領土について「0島マイナスα」の悪夢すら想定されている。『外交青書2019』から「北方四島は日本に帰属する」という文言を削ってプーチンに忖度する安倍首相の姿は、正視にたえない。「地球儀を俯瞰する外交」ならぬ「地球儀を弄(もてあそ)ぶ外交」は破綻し、いまや、日本の利益をことごとく削いでいく「売国外交」に進化しているのが実態ではないだろうか。
外交だけでない。「アベノミクス」という経済・財政フェイクを押し出した「アベコベーション」政策の失敗が、日々明らかになっている。東日本大震災からの「復興の加速化」をいいながら、東京オリンピックを無理やりねじ込んで被災地の復興を事実上妨げるという「アベコベーション」をやっている(直言「「復興五輪」というフェイク」)。
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経済・社会政策では、「女性活躍」(2013年「日本再興戦略」)、「3年間赤ちゃん抱っこし放題」(2013年)、「すべての女性が輝く日本へ」(2014年)、「一億総活躍社会」(2015年「新・三本の矢」)、「希望出生率1.8の実現」(2016年)、「人づくり革命」(2017年)、「働き方改革」(2018年)、そして「人生再設計」(2019年)等々。安倍首相の口から繰り出される、歯の浮くような言葉の数々は、「安倍流ダブルスピーク」であり、これが、選挙の度に国民の目を惑わせてきた。
それにしても、今度の「人生再設計」はひどい。4月10日の第5回経済財政諮問会議(議長・安倍首相)は、バブル崩壊後に就職活動の時期を迎えた世代(30代半ばから40代半ばの人たち)が「就職氷河期世代」と呼ばれてきたことを変更して、これを「人生再設計第一世代」と呼ぶことを決めたという。これをまじめに受けとめる人は多くはないだろう。「第二世代」が予定されているのか、といった皮肉もネットに飛び交っている。
この首相の場合、一にも二にも、自分の手でおじいさんの悲願だった憲法改正をやりたい、これが最大の目標である。この思いは執念(怨念)のようなものであるが、皮肉なことに、それが仇となって、自民党内にも保守層のなかでも軋みを生み、一丸となって憲法改正に向かうことを妨げてきた。すでにその傾向は、12年前の第1次安倍内閣の時に始まっていた。憲法改正国民投票法の審議過程で、法案早期成立を焦って強行採決に持込み、民主党(当時)との合意が得られるところまできていたのに、大きな反発をかってしまった。まさに、「安倍晋三、不徳の致すところ」である。
第2次内閣を発足させるや、憲法96条の「総議員の3分の2以上の賛成で発議し」を、「総議員の過半数」に変更する「96条先行改正案」を打ち出した(直言「「アベコベーション」の日本?とりあえず憲法96条?」)。これはあまりに無理筋のため、すぐに引っ込め、直ちに、解釈による改憲に向かう。その「到達点」が「7.1閣議決定」に基づく安全保障関連法である。さらに、憲法の核心的条項である人権条項(97条)を削除するという、とんでもない勘違いも出てきた(直言「憲法97条は条文整理の対象にならない—「アベコベーション」の日本へ」)。
憲法改正の必要性に関するまともな説明は、この首相の口からは出て来ない。「押しつけ憲法だから」「現実とあっていない」「自分たちの手で憲法をつくり未来を切り拓こう」等々、理由にならない理由を、相変わらず語っている。私は15年前、安倍首相(当時・自民党幹事長)の改憲理由を徹底的に批判した。その後、国民に憲法改正について「慣れる」「味わう」「植えつける」という方向性が「お試し改憲」という形で出てきて、憲法9条以外のテーマで、まずは「合意を得やすい」条文を選定して改憲に着手するという「改憲2段構え」の戦略が打ち出された。具体的な条文としては、緊急事態条項や環境権、財政規律条項だった(Webronzaの拙稿参照)。
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そして、大きな転換は2年前の2017年5月3日に出てきた。この日、安倍晋三首相は『読売新聞』の単独インタビューで「9条加憲」を唐突に打ち出して、自民党議員にも驚きが走ったのは記憶に新しい。石破茂氏などから異論も出たが、わずかな期間で、この唐突な「加憲提案」が党の方針となったのである。改正憲法を「2020年施行」すると、安倍首相は勝手に期限を切った。憲法改正の発議には、衆参両議院の総議員の3分の2以上の賛成が必要であり、「首相に発議に関する権限はない。勝手に施行期日を決めるなど、自らが「立法府の長」と思い込み始めているのではないか(直言「憲法改正のアベコベーション—「フェイク改憲」」)。
「自衛官の子どもの涙」を理由としたり、「都道府県の6割が自衛官募集業務に協力しない」というフェイクを使ったりと、安倍首相の改憲への思い(執念)とは裏腹に、改憲へのアイデアの枯渇とパワーの減少は否めない。先々週の水曜日(4月18日)には、最側近の萩生田光一幹事長代行の口から、憲法改正を「ワイルドに進める」という言葉が飛び出した(『朝日新聞』4月19日付)。wildとは、野生的に、荒々しく、野蛮に、乱暴にということを意味する。改憲に慎重な公明党を連立相手から切って、改憲に積極的な「維新の会」と手を組むという連立組み替えへの号砲かもしれない。
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東日本大震災の直後から、憲法に緊急事態条項がなかったから十分な対応ができなかったという形で、震災対応を改憲につなげる動きが生まれた。私はこれを「震災便乗型改憲」と呼んだ。ナオミ・クライン『ショック・ドクトリン——惨事便乗型資本主義の正体を暴く』(上・下、岩波書店、2011年)は、地震や津波などの大災害で人々の頭が真っ白になっているのを見計らって土地を買い占めたり、開発を行ったりする「改革」の手法を「惨事便乗型資本主義」と喝破した。大震災のどさくさ紛れに改憲を持ち出すことを「震災便乗型改憲」とするゆえんである。そして、今回は、スポーツの祭典であるオリンピックや、大嘗祭などの行事が続く新天皇の即位や改元などに便乗して「新しい時代の憲法」を叫ぶ安倍流改憲は、さしずめ「祭典便乗型改憲」ということだろう。
先週の金曜、4月26日付で、自民党所属議員あてに、幹事長と憲法改正推進本部長名で、「憲法改正ビラ」と『日本国憲法改正の考え方——条文イメージ(たたき台素案)Q&A』』などを活用して、参議院選挙に向けて、憲法改正の動きを強める指示が出されている。
明後日(5月1日)、新天皇即位という大イベントが始まり、その2日後の憲法記念日には、『読売新聞』を先頭に、「新しい時代に、新しい憲法をつくろう」というリセット大合唱が始まるのだろう。私は、今年の5月3日、愛知県名古屋市で講演する。日本の危ない状況を、憲法に基づいてしっかり診断する。名古屋方面の方はどうぞご参加ください。
「憲法施行72周年記念市民のつどい:転換期の憲法」
・ 日時:2019年5月3日(金)13時∼16時
・ 場所:名古屋市公会堂(鶴舞公園内)
・内容:第1部 水島朝穂「危ない日本の憲法診断——立憲か、壊憲か」
    第2部 憲法寄席:立川談四楼
・その他:一般 1300円(当日1600円)、学生・年金生活者900円(当日1200円)
主催:愛知憲法会議
後援:名古屋市

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猫と暮らしバラ栽培、ミュージカル、玉三郎観劇、動物園巡礼にはまっています。

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